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doll

鏡に映るのは 夜の帳の色の髪。
星色の吸い込まれそうな瞳。
男性にしては細めの首筋。
鎖骨に掛かる緩やかな毛先。
骨ばった肩。
筋肉質な腕。
うっすらと欠陥の浮いた甲。
節くれだった指。


何度見ても、変わらない
目の前にいる人は。

「…どうして?」
聞きなれた低いヴォイス。

違う
違うのだ
聞きたいのはそんな声じゃない!

振り上げた拳を目の前の鏡に叩きつける。
予想以上の負荷がかかった鏡は
雲の巣状に亀裂を走らせ、
この姿を隠そうとする。


「…いったぁ」
拳が真っ赤な鮮血で染まっていた。
よく見たら
小さなガラスの破片が傷口の上に
散っていた。
その上からもう一方の手を翳して
きつく握りしめる。


「−−−っ!!!」
電流のような痛みが全身を走り
堪えきれず
膝を付いてその場に崩れた。
圧力をかけられた傷口は
歪んで内部から
もっと多くの血を溢れされた。
生きた温かさが皮膚を伝って
足元に血溜まりを作った。



嘘ではない。
勘違いでもない。
この感覚は
目の前の人物から
伝わってきている。

これが、現実。

「…なんで、 なんでなんだよぉ…っ!!!」


どうしてだ
最愛の人を守るために
この世界を放棄した私の目に映る私が
何故
彼そのものなのだ。


いつも聞いていた声が
弱弱しく戦慄いていた。
何度も繋いでいた手は血に染まり
鋭い痛みと熱を発し

大好きな貴方は



どこにもいない。

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